現地メディア向け開発協力プレスツアーを実施
12月21日、在ウズベキスタン日本国大使館は、ウズベキスタンのメディア向けの開発協力プレスツアーを実施し、新聞・テレビ・ラジオ・通信社7社が参加しました。開発協力プレスツアーとは、現地メディアが日本の開発協力の成果や意義についてまとめて取材する機会を提供することで、裨益国の一般国民への情報発信を強化することを目的として、外務省が行っている事業です。
今回のツアーでは、当館が直接要請を受けて実施している「草の根・人間の安全保障無償資金協力(草の根無償)」に的を絞り、タシケント市内で実施された以下の3案件を紹介しました。
(1) ウズベキスタン科学アカデミー付属免疫学研究所医療機材整備計画(平成25年度(2013年度))
(2) タシケント市シャイホントフール地区第37番特別学校機材整備計画(平成27年度(2015年度))
(3) タシケント州立がん診療センター医療機材整備計画(平成28年度(2016年度))
案件(1)が実施されたウズベキスタン科学アカデミー付属免疫学研究所は、研究と診療の両方を行なう3次レベルの医療機関であり、免疫学・遺伝子学の研究のほか、B型・C型肝炎、HIV、白血病、自己免疫疾患、子宮頸がんといった疾患の診療を行っており、ウズベキスタン全国のみならず、中央アジアの近隣諸国からの患者など、年間数万人の患者が訪れる中央アジアでも中心的な役割を果たす病院です。
同研究所で取り扱う疾患の正確な診断のためには、血液の検査と分析が不可欠ですが、同病院には血球計測器がなかったことから、顕微鏡を使ってリンパ球や血球の数を目視で計測することを余儀なくされ、1日最大20人分しか取り扱えない状態となっていました。そこで、草の根無償によって、最新式の自動血球計測器を導入した結果、1人分の検査・分析を1~5分で終えられるようになり、現在では、1日数百人の検査・分析を受け付けることが可能になりました。
取材陣からは、草の根無償の実施によって業務の大幅な効率化が可能となったという研究所側からの説明を受けて、ウズベキスタンにおける上記疾患の現状や患者数の増加状況などについて熱心に質疑が行われていました。
案件(2)が実施されたタシケント市シャイホントフール地区第37番特別学校は、身心にハンディキャップを抱えた生徒200人以上が在籍する特別支援学校です。
同学校では、児童の自立支援・職業訓練の一環として、裁縫の実習授業が行われていますが、かつては1980年に製造された旧ソ連製のミシンしかなく、満足な授業の実施が行えないばかりか、生徒の安全上の問題も発生していました。そこで、草の根無償によって、最新式の電動ミシンを導入するとともに、同じく劣化によってさまざまな問題が発生していた調理室、食堂、一般教室などの家具その他教育設備を更新しました。
取材陣は、新しいミシンで裁縫実習に一生懸命取り組む生徒の様子を取材するとともに、学校内の新しくなった一連の設備を視察し、草の根無償による支援が身近なレベルでどのように活用されているかについて理解を深めました。
案件(3)が実施されたタシケント州立がん診療センターは、8部局220床を有する大規模医療機関で、年間7万人以上の外来患者が受診する地域の拠点病院です。
同センターでは、年間約8,000件近くの内視鏡検査を実施していますが、かつては2005年に製造された中古の内視鏡機材しか保有しておらず、レンズの劣化やカメラ内の色彩分析装置の故障によって、胃がんや食道がんの正確な診断が困難な状態にありました。そこで、草の根無償によって、最新式の日本製内視鏡及び付属機材一式を導入しました。
取材陣は、新旧機材の性能の違いや、撮影した写真の判別のしやすさを比較したプレゼンテーションを見ながら、本案件の実施後にいかに診療レベルが向上しているかについて詳しい説明を受けました。
プレスツアー実施後、参加したメディアによって、テレビ・ラジオ放送、新聞紙面などを通じて、草の根無償の概要と実績、上記の3案件の成果についての報道が行われました。今回のプレスツアーを通じて、草の根無償及び我が国の対ウズベキスタン開発協力に対するウズベキスタン国民の理解がより一層深まったことが期待されます。